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2026-09-11 00:43:00

ソフトテニス選手の股関節が曲がらない。2年間改善しなかった本当の理由

「股関節が硬いから、ストレッチをしましょう」。そう言われて何年もストレッチを続けているのに、なぜか改善しない。そんな経験はありませんか。

今回は、2年間、病院のリハビリやスポーツ専門の整体・接骨院に通っても股関節の痛みと可動域制限が変わらなかったソフトテニス選手の症例をご紹介します。原因は、多くの方が思っているような「筋肉の硬さ」だけではありませんでした。

CASE

「お尻が硬いから」で終わっていた、これまでの対応

この方は、しゃがみ込みができない、ズボンがはきにくい、ソフトテニスのストロークで股関節を曲げて重心を落とせない、といった症状で来院されました。股関節の屈曲角度は80度前後まで制限され、屈曲しようとするとロックしたような強い抵抗感と痛みが生じる状態でした。

これまで通われていた病院のリハビリや整体・接骨院では、「お尻が硬いので、お尻のストレッチをしましょう」という説明のもと、マッサージとストレッチのメニューを渡されていたとのことでした。しかし、2年間続けても変化はみられなかったそうです。

私が評価したところ、股関節はすでに骨膜・筋膜・腱の癒着が強く進み、皮膚の滑走性まで失われている状態でした。関節そのものが動く余地を失っているところに、外側からストレッチで伸ばそうとしても、組織は伸びず、股関節の前側で組織の挟み込み(インピンジメント)が起こり、痛みだけが再生産されていたと考えられます。「硬いところをストレッチする」という対応では、根本的な原因にアプローチできていなかったのです。

CAUSE

股関節が代償し続けた「体幹の不安定性」

なぜ、これほど強い癒着が生じていたのでしょうか。この方は学生への指導も行っており、日頃から骨盤が後ろに傾いた状態(骨盤後傾)で長時間活動する習慣がついていました。その結果、太ももの前面の筋肉(大腿四頭筋)が常に張力を強いられ、腱へのテンションが慢性的にかかり続けていたと考えられます。

さらに評価を進めると、体幹の左右の安定性が大きく低下していることがわかりました。片足に体重をかける立脚期に体重が外側へ逃げてしまい、股関節が内側に入る動き(内転)が使えず、太ももの外側から後方にかけての組織の動きがほとんど失われていました。本来であれば股関節が担うはずの安定を、腰の骨(腰椎)だけで無理に補っていた状態だったのです。

一見すると体幹は回旋しているように見えても、実際には胸郭と股関節を使った回旋運動ができておらず、下部胸椎・腰椎だけで動きを作り出していました。本人も「腕だけでラケットを振っている感覚だった」と話されており、股関節の機能低下が競技パフォーマンスにまで直結していたことがうかがえます。

APPROACH

局所と全身、両方からのアプローチで見えた変化

当院では、股関節の局所だけでなく、その背景にある全身の連動性まで含めて評価・アプローチを行いました。まず、太ももの骨(大腿骨)前面の組織の癒着を丁寧に解いたうえで、内側にねじれていた大腿骨の向きを中間の位置に戻していきました。すると、それまで80度前後で止まっていた股関節の屈曲が、痛みなくスムーズに深まっていきました。

通常、片方の股関節の可動域改善には15分程度を要しますが、このケースでは癒着の強さから約70分を要しました。癒着や体幹機能の低下が長期間に及んでいるほど、修正にも相応の時間がかかります。あわせて、体幹を内側から安定させる力(腹圧)のコントロール感覚を取り戻すアプローチも行いました。

その結果、初回の来院からおよそ2時間で、痛みなく股関節を曲げられること、しゃがみ込みができること、そしてしっかり重心を落としてストロークできることを実感していただけました。2年間変わらなかった状態が、その日のうちに大きく変化したことに、大変驚かれていました。

SUMMARY

まとめ|股関節の可動域制限は「硬さ」だけが原因ではない

今日お伝えしたいポイントは3つです。

01

「硬いところのストレッチ」だけでは改善しないことがあります。関節そのものが動く余地を失っている場合、ストレッチはかえって組織への負担になることがあります。

02

可動域制限の背景には、組織の癒着や骨の位置の乱れが隠れていることがあります。表面的な硬さだけを追いかけても、根本的な原因には届きません。

03

体幹の不安定性を放置すると、その代償が関節の組織そのものの変化にまで及ぶことがあります。痛みのある部位だけでなく、全身の連動性まで評価することが根本改善への近道です。

一度ご相談いただくだけで、原因が明確になります

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2026-09-11 00:15:00

痛みがなくても、フィジカルデザインに通っていいですか?

「痛みが出てから行く場所」というイメージを整体に対してお持ちの方は少なくありません。

「今は特に痛みがないけれど、通ってもいいのだろうか」というご質問を、実際に多くいただきます。結論からお伝えすると、痛みのない状態での来院こそ、フィジカルデザインの活用法として最も多いケースです。

REALITY

実は8割が「痛みのない状態」で来院しています

当店にお越しいただく方の約8割は、痛みがない状態で利用されています。目的は主に3つです。

試合前の徹底的なコンディショニング調整、日々の練習の中で生まれる身体の崩れの修正、そしてレギュラーメンバーやAチームに残り続けるための、ケガをしない身体づくりとコンディション管理です。いずれも「痛みが出た後に対応する」のではなく、「痛みが出る前の状態を整え続ける」という発想に基づいています。

トップレベルで競技を続ける選手ほど、この予防的な関わり方を重視される傾向があります。とくに県大会上位クラス、全国大会に出場するような選手に、その傾向が強く見られます。現場でよく耳にするのが、「同じ練習をしているのに、なぜあの人たちはケガをしないのだろう」という言葉です。レベルの高い選手ほど、身体においても日頃からの準備を怠らないのだと考えられます。

実際に、フィジカルデザインに通うようになってからケガをしなくなったというお声も多くいただきます。チームの中でケガによる離脱を一度も経験していないのは自分だけだと言われる方も、少なくありません。

WHAT WE FIND

自覚のない機能低下が見つかるケースが多くあります

痛みという自覚症状がなくても、全身の状態を細かく確認すると、多数の修正点が見つかることが少なくありません。実際に選手の方からよく驚かれる代表的な例をご紹介します。

股関節が曲がりにくくなっていた(股関節の可動域が低下していた状態)

体幹の回旋が不足していた(体幹をひねる動きの可動域が制限されていた状態)

体幹が不安定になっていた(体幹を内側から支える力が低下していた状態)

骨盤の前後のバランスが崩れていた(骨盤が正しい位置から傾いていた状態)

インナーマッスルが働きにくくなっていた(身体を内側から支える深層の筋肉が十分に機能していなかった状態)

これらはいずれも、日常の動作やパフォーマンスには大きな支障を感じにくい一方で、負荷の高い競技動作を繰り返す中で、将来的な痛みや不調につながりうる要因と考えられます。

APPROACH

「気づいてから」ではなく「気づく前」に

一般的に、身体の不調は痛みという自覚症状をきっかけに気づかれることがほとんどです。しかし、痛みという感覚は、身体に起きている変化のごく一部しか教えてくれないと考えられます。

フィジカルデザインでは、痛みの有無に関わらず全身の状態を評価することで、自覚症状として現れる前の小さな崩れを発見し、修正することを重視しています。この「気づく前に整える」という視点こそが、コンディショニングとしての来院が多い理由です。

SUMMARY

まとめ|痛みの有無ではなく「整えたいかどうか」で判断を

まとめのポイントは3つです。

01

来院者の約8割は痛みのない状態で利用しています。試合前調整・崩れの修正・レギュラーメンバー残存のためのケガ予防が主な目的です。

02

自覚のない機能低下は珍しくありません。股関節や体幹、骨盤、インナーマッスルなど、細かな修正点が見つかるケースが多くあります。

03

痛みは変化のすべてを教えてくれません。気づく前に整えることが、パフォーマンスの安定とケガ予防につながると考えられます。

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2026-08-30 20:13:00

体幹トレーニングをしていても膝や足首の怪我を繰り返すのはなぜか|重心を作るのは腰椎だった

体幹トレーニングを欠かさず行っているのに、膝や足首の怪我を繰り返していませんか。

「もっと体幹を鍛えれば防げるはず」と負荷を上げても怪我が減らない場合、原因は体幹の強さではなく、腰椎(腰の骨)による重心移動の繊細なコントロールにあるかもしれません。

TEST

バランスディスクの上で片足をわずかに挙げられますか

フィジカルデザインでは、選手の身体を評価する際、バランスディスクに座った状態から片脚をわずかに挙上していただくという、非常にシンプルな動作を確認します。

競技レベルの高い選手であっても、この動作を安定して行える方は決して多くありません。左右への重心移動、お尻の筋肉(臀部)の適切な収縮、そして腹圧(体幹を内側から安定させる力)によるコントロールのいずれかが不足していると、この単純な動作がうまく成立しないためです。

見た目には難易度の高いトレーニングをこなせているように見える選手でも、この基礎的な動作でつまずくケースは珍しくありません。体幹トレーニングの多くが「動作をこなせているかどうか」に注目しがちで、その動作を支えている土台の機能までは評価されにくいためだと考えられます。

MECHANISM

重心移動の主導権は、実は腰椎にある

この単純な動作の裏側で起きていることを整理すると、次のような順序が見えてきます。まず腹圧による体幹の安定が土台としてあり、それが機能して初めて、腰椎をわずかに左右へ動かす微細なコントロールが可能になります。この腰椎の動きそのものが、重心移動の実体であると考えられます。

一般的には、重心移動やバランス能力はお尻や太ももといった下肢の筋力によって生み出されているとイメージされがちです。しかし実際には、下肢は腰椎が作り出した重心を受け止め、支えるという受動的な役割を担っているにすぎません。重心移動の主導権は下肢ではなく、腰椎側にあると言えます。

つまり、いくら下肢のトレーニングを積み重ねても、重心そのものを生み出す腰椎のコントロールが機能していなければ、根本的な改善にはつながりにくいのです。

RISK

見過ごされがちな痛みの連鎖

腰椎で重心移動を主導できない選手が片脚立ちの姿勢を取ると、支持脚側に重心を完全に乗せきれず、骨盤が反対側に落ちる状態(骨盤下制)が起こります。重心が支持脚に十分乗らないまま身体を支えようとすることで、対側の膝には外側に開き、ねじれるような力が繰り返しかかることになります。

この負荷の蓄積が、膝内側の痛みや腸脛靭帯炎(膝の外側を通る腱が擦れて炎症を起こす症状)、足首の捻挫、そして腰や首の痛みへと波及していくと考えられます。一見すると別々の部位の不調に見えても、その根っこをたどると、同じ「重心移動を腰椎が主導できていない」という一点に集約されているケースが少なくありません。

どちら側に症状が出やすいかは選手によって異なり、両側とも制御が難しい方もいれば、片側だけ重心を乗せられないという方もいます。切り返し動作の多いサッカー選手のように、競技特性によって特定の傾向が強く出ることもあります。

GAP

一般的なトレーニングで見落とされやすいもの

体幹トレーニングやパーソナルトレーニングの多くは、お尻や下肢の筋出力を高める種目を中心に組まれる傾向があります。プランクやクラムシェル、サイドランジといった種目はいずれも重要なトレーニングですが、それだけでは重心を実際に作り出している腰椎の微細な制御までアプローチしきれないと考えられます。

見た目のトレーニング強度を上げれば改善するはずだという発想は、根本の土台が整っていない状態では機能的なトレーニングになりにくいと言えます。まずは、重心移動の主導権を握る腰椎の機能そのものに目を向ける必要があります。

APPROACH

フィジカルデザインのアプローチ

フィジカルデザインでは、バランスディスクによる評価に加えて、起立動作、片足立ち、左右への重心移動、股関節の可動域、骨盤の前傾・後傾、腰椎の前弯・後弯、脊柱の配列、腹圧の機能的な状態まで、詳細な評価を行います。

そのうえで、代償的にバランスを取っている箇所、つまり腱や皮膚、骨膜などの癒着によって可動域制限が生じている箇所を徹底的に取り除いていきます。可動域に制限があると、わずかな動きにも余計な力が必要になり、それが腹圧を生み出すインナーユニット(呼吸や体幹の安定に関わる深層の筋肉群)が機能しない原因になっていると考えられるためです。

多くの方が選ばれるベーシックコースでは、施術当日のうちに体幹・腹圧がある程度機能し、安定が得られる状態を目指します。翌日に競技を行った際、動きが大きく変わったと感じられる選手も少なくありません。

SUMMARY

まとめ|怪我を繰り返す前に、重心の作られ方を見直す

今日からできることは3つです。

01

バランスディスクで片脚をわずかに挙げてみる。左右差なく安定して行えるか、まず自分の身体で確認してみましょう。

02

下肢のトレーニングだけでなく、腰椎の微細なコントロールと腹圧の機能に目を向ける。見た目の強度よりも、土台が整っているかどうかが重要です。

03

繰り返す膝・足首・腰・首の不調は、部位ごとに対処するのではなく、重心移動の根本から見直す。

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2026-08-28 00:24:00

体幹トレーニングをしても腰痛や疲れやすさが変わらないのはなぜ?

体幹トレーニングやピラティスを頑張っているのに、腰痛や疲れやすさが変わらない。そう感じたことはありませんか。

体幹・腹圧のコントロールは、身体機能の中でも土台となる部分です。ここが整わないまま部分的なトレーニングを重ねても、競技力の向上にはつながりにくいと考えられます。このブログでは、腹圧がうまく働かないときに起こりやすい不調と、その背景にある「一貫した専門性」の重要性について解説します。

PATTERN

腹圧が働かないと、なぜ疲れや腰痛につながるのか

腹圧(体幹を内側から安定させる力)がうまく働かない場合、体幹そのものが不安定な状態になります。すると身体は、本来使うべき部位の代わりに、腕や脚といった四肢の筋肉を使って姿勢を保とうとします。

この代償動作が続くと、四肢の筋肉には常に余分な負荷がかかり続けることになります。硬さが抜けにくくなったり、疲労が蓄積しやすくなったりするのは、この代償の積み重ねが一因と考えられます。

さらに、体幹の不安定さは腰椎(腰の骨)にも影響します。本来、腹圧によって支えられるはずの負荷が腰椎に集中しやすくなり、腰痛につながるケースも少なくありません。四肢の硬さ、疲労感、腰痛は、それぞれ別の問題のように見えて、実は腹圧というひとつの土台の不安定さから波及している場合が多いのです。

MISUNDERSTANDING

「腹圧を入れる」の中身は、指導者の知識によって違う

興味深いことに、「腹圧を入れる」という同じ言葉を使っていても、その中身は指導者の知識によって大きく異なる場合があります。

たとえば、腹圧を「体幹を硬く締めること」として指導されるケースがあります。この場合、実際に起きているのは腹直筋(お腹の前面の筋肉)の過緊張であり、本来の腹圧コントロールとは別のものになってしまいます。

その結果、骨盤後傾(骨盤が後ろに傾いた状態)や腰椎の前弯(腰の骨の自然なカーブ)が修正されないまま残り、大殿筋(お尻の筋肉)が働きにくい状態が固定化されてしまうことがあります。腹圧という言葉は同じでも、目指している身体の状態がまったく異なれば、当然結果も変わってきます。

CONSISTENCY

一人の職人が仕上げるように、身体づくりにも一貫した視点が必要

絵画や陶芸の作品は、一人の作家が構想から仕上げまで一貫して手がけるからこそ、意図が途切れることなく形になります。レーシングカーも同様で、整備・チューニング・仕上げをそれぞれ異なる方針を持つ担当者がばらばらに手がければ、車としての完成度はかえって下がってしまいます。

身体づくりにも、同じことが言えると考えられます。トレーニングジム、ピラティス、整体など、複数の場所で異なる方針の指導を同時に受けると、身体には矛盾したメッセージが積み重なっていきます。「あちらでは体幹を締めるように、こちらでは緩めるように」といった相反する指示が交錯すれば、身体はどちらを基準にすればよいか分からなくなってしまうのです。

RECALIBRATION

「できている感覚」と実際の身体の使い方がずれてしまう理由

腹圧コントロールの再学習において、最も難しいのがこの部分です。当院でのアプローチにより、立位や座位での不安定感が軽減されても、大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)の緊張が根強く残り、腹圧や大殿筋が使いにくい状態が続くケースがあります。

このとき起きているのは、本人の「腹圧が入っている」という主観的な感覚と、実際には大腿四頭筋や体幹表層の力みで代償しているという客観的な状態との間のズレです。

このズレを修正するには、身体が「これが正しい状態だ」と判断できる基準(物差し)を持って向き合う必要があると考えられます。毎回異なる指導方針に触れていると、身体(神経系)はこの基準を確定できないまま、常に新しい情報で上書きされ続けてしまいます。「いつもと違うことをやっている」という体感だけが残り、実際の感覚のズレは修正されないまま長期化してしまう、というのはこうした理由によるものと考えられます。

なお、この基準がいったん身体の中で定まったあとであれば、多様なトレーニングや複数の視点に触れることは、運動学習にとってむしろプラスに働くと考えられています。重要なのは、基準が定まる前の段階で異なる方針が混在しないことです。土台が整ってから応用としての幅を広げていく。この順序を守ることが、遠回りのようで最も確実な近道になると考えられます。

SUMMARY

まとめ|腹圧の感覚を取り戻すために大切なこと

今日からできることは3つです。

01

腹圧の機能不全は全身に波及します。四肢の硬さ・疲労・腰痛は、腹圧という土台の不安定さから波及している場合が多くあります。

02

「腹圧」の中身は指導者の知識によって異なります。同じ言葉を使っていても、目指す身体の状態が違えば結果も変わってきます。

03

感覚の再学習には一貫した基準が必要です。複数の異なる方針を同時に受けていると、身体は「正しい状態」の基準を確定できません。基準が定まったあとは、多様な刺激もプラスに働きます。

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2026-08-18 00:11:00

体幹トレーニングをしていたのに、なぜ腰椎分離症に。見落とされがちな「腹圧」との関係

「体幹トレーニングをしっかり行っていたのに、腰椎分離症になってしまった」

このようなお声を、実際によくいただきます。体幹は身体を支える重要な部分であり、鍛えていれば腰のケガを防げると考えるのは自然なことです。しかし、そこには見落とされがちな注意点があります。トレーニングは、単に筋肉を強くするだけのものではありません。繰り返した動作そのものを、身体に学習させるものでもあるからです。

REASON

「体幹を鍛える」=「腰に良い」とは限らない

体幹トレーニングと一口に言っても、その内容はさまざまです。腰椎を安定させながら行うものもあれば、腰を反らせたり回旋させたりしながら負荷をかけるものもあります。

そしてもう一つ、見落とされがちなポイントがあります。それが「腹圧」です。プランクなどの体幹トレーニングは、お腹の中の圧力(腹圧)が正しく高まった状態で行って初めて、本来の効果を発揮します。

腹圧が十分に高まらないまま行うと、身体は代償として脊柱起立筋(背中側の筋肉)を使い、姿勢を保とうとします。この代償動作が繰り返されることで、腰椎の反り(前弯)がかえって強まってしまうのです。

つまり、体幹トレーニングを行っていることと、腰椎が守られていることは、必ずしもイコールではありません。トレーニングの「量」ではなく、腹圧が正しく機能しているかという「質」が重要になります。

BACKGROUND

見落とされがちな「開脚指導」と腹圧の関係

野球の現場では、股関節の柔軟性を高めるために、開脚(股割りなど)を重視する指導が行われることがあります。柔軟性そのものは大切な要素です。しかし、開脚方向の可動域を過度に追求すると、股関節まわりの安定性が犠牲になるケースがあります。

特に影響を受けやすいのが、骨盤底筋群です。骨盤底筋群は、腹横筋・横隔膜・多裂筋とともに「インナーユニット」と呼ばれ、腹圧を生み出すために欠かせない筋群です。

ここが過度に伸ばされ続けると、収縮する力が弱まり、そもそも腹圧が入りにくい身体になってしまいます。その状態で体幹トレーニングを積み重ねても、腰椎を守るための土台ができていないため、負担は腰椎に集中し続けてしまうのです。

PROCESS

高校進学後の負荷増加が引き金に

高校入学を機に筋力トレーニングの量が増え、特にスクワットの頻度が上がるケースは少なくありません。腰椎前弯(反り腰)の姿勢のままスクワットを繰り返すと、しゃがむ・立つという動作のたびに、腰椎へ伸展方向のストレスが反復してかかります。

「腹圧が入らない土台」と「腰椎前弯位でのスクワットの蓄積」。この2つの要因が重なった状態に、バッティングスイングのような腰椎の回旋・伸展を伴う高負荷動作が加わったことで、疲労骨折(腰椎分離症)として症状が顕在化したと考えられます。

POINT

トレーニングは「筋肉」だけでなく「動き」も鍛えている

トレーニングと聞くと、「腹筋を鍛える」「背筋を鍛える」というように、筋肉や身体の部位に意識が向きがちです。しかし実際にトレーニングによって変化するのは、筋力だけではありません。身体の協調性やバランス、力の伝え方といった「動きのパターン」も、繰り返しの中で変化していきます。

腰を反らせる動作を伴う体幹トレーニングを繰り返していれば、身体はその動きを「正しい動作」として学習してしまいます。そしてその動きは、トレーニング中だけでなく、投球やスイングといった競技動作の中にも表れる可能性があります。

だからこそ、「何を鍛えているか」だけでなく、「その動きを通じて、身体にどのような動作パターンを学習させているか」まで考える必要があるのです。

SUMMARY

まとめ|腰椎分離症を防ぐために見直すべきポイント

まとめのポイントは3つです。

01

体幹トレーニングは「量」より「質」。腹圧が正しく機能しているかどうかが、腰椎を守れるかの分かれ道になります。

02

柔軟性と安定性は、セットで考える。開脚など可動域を広げる指導だけでなく、骨盤底筋群を含むインナーユニットの機能もあわせて評価する必要があります。

03

フォームチェックは、負荷が増える前に。筋トレ量が増える高校進学のタイミングは、腰椎への負担が急増する時期です。この時期こそ、動作の質を専門的にチェックすることが重要です。

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