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体幹トレーニングをしていたのに、なぜ腰椎分離症に。見落とされがちな「腹圧」との関係
「体幹トレーニングをしっかり行っていたのに、腰椎分離症になってしまった」
このようなお声を、実際によくいただきます。体幹は身体を支える重要な部分であり、鍛えていれば腰のケガを防げると考えるのは自然なことです。しかし、そこには見落とされがちな注意点があります。トレーニングは、単に筋肉を強くするだけのものではありません。繰り返した動作そのものを、身体に学習させるものでもあるからです。
REASON
「体幹を鍛える」=「腰に良い」とは限らない
体幹トレーニングと一口に言っても、その内容はさまざまです。腰椎を安定させながら行うものもあれば、腰を反らせたり回旋させたりしながら負荷をかけるものもあります。
そしてもう一つ、見落とされがちなポイントがあります。それが「腹圧」です。プランクなどの体幹トレーニングは、お腹の中の圧力(腹圧)が正しく高まった状態で行って初めて、本来の効果を発揮します。
腹圧が十分に高まらないまま行うと、身体は代償として脊柱起立筋(背中側の筋肉)を使い、姿勢を保とうとします。この代償動作が繰り返されることで、腰椎の反り(前弯)がかえって強まってしまうのです。
つまり、体幹トレーニングを行っていることと、腰椎が守られていることは、必ずしもイコールではありません。トレーニングの「量」ではなく、腹圧が正しく機能しているかという「質」が重要になります。
BACKGROUND
見落とされがちな「開脚指導」と腹圧の関係
野球の現場では、股関節の柔軟性を高めるために、開脚(股割りなど)を重視する指導が行われることがあります。柔軟性そのものは大切な要素です。しかし、開脚方向の可動域を過度に追求すると、股関節まわりの安定性が犠牲になるケースがあります。
特に影響を受けやすいのが、骨盤底筋群です。骨盤底筋群は、腹横筋・横隔膜・多裂筋とともに「インナーユニット」と呼ばれ、腹圧を生み出すために欠かせない筋群です。
ここが過度に伸ばされ続けると、収縮する力が弱まり、そもそも腹圧が入りにくい身体になってしまいます。その状態で体幹トレーニングを積み重ねても、腰椎を守るための土台ができていないため、負担は腰椎に集中し続けてしまうのです。
PROCESS
高校進学後の負荷増加が引き金に
高校入学を機に筋力トレーニングの量が増え、特にスクワットの頻度が上がるケースは少なくありません。腰椎前弯(反り腰)の姿勢のままスクワットを繰り返すと、しゃがむ・立つという動作のたびに、腰椎へ伸展方向のストレスが反復してかかります。
「腹圧が入らない土台」と「腰椎前弯位でのスクワットの蓄積」。この2つの要因が重なった状態に、バッティングスイングのような腰椎の回旋・伸展を伴う高負荷動作が加わったことで、疲労骨折(腰椎分離症)として症状が顕在化したと考えられます。
POINT
トレーニングは「筋肉」だけでなく「動き」も鍛えている
トレーニングと聞くと、「腹筋を鍛える」「背筋を鍛える」というように、筋肉や身体の部位に意識が向きがちです。しかし実際にトレーニングによって変化するのは、筋力だけではありません。身体の協調性やバランス、力の伝え方といった「動きのパターン」も、繰り返しの中で変化していきます。
腰を反らせる動作を伴う体幹トレーニングを繰り返していれば、身体はその動きを「正しい動作」として学習してしまいます。そしてその動きは、トレーニング中だけでなく、投球やスイングといった競技動作の中にも表れる可能性があります。
だからこそ、「何を鍛えているか」だけでなく、「その動きを通じて、身体にどのような動作パターンを学習させているか」まで考える必要があるのです。
SUMMARY
まとめ|腰椎分離症を防ぐために見直すべきポイント
まとめのポイントは3つです。
体幹トレーニングは「量」より「質」。腹圧が正しく機能しているかどうかが、腰椎を守れるかの分かれ道になります。
柔軟性と安定性は、セットで考える。開脚など可動域を広げる指導だけでなく、骨盤底筋群を含むインナーユニットの機能もあわせて評価する必要があります。
フォームチェックは、負荷が増える前に。筋トレ量が増える高校進学のタイミングは、腰椎への負担が急増する時期です。この時期こそ、動作の質を専門的にチェックすることが重要です。

